第9章 初めての失恋(切甘、沖田)
暗い部屋で、沖田は天井を見詰めたまま慣れない味の煙草を吸っていた。
へんな味の煙が肺をめぐって鼻から抜ければ、気持ちもだいぶ落ち着いてきた。
彼女に振られた。
付き合って三か月の彼女。
出会いはナンパだった。
別になんとなく。妙に加虐心に駆られる女だったから声をかけた。
真撰組の制服のままアドレス聞いたもんだから、訝しげな顔をしながらも教えてくれた。
一緒にいて楽しい。
というか、からかうのが楽しい。
抱きしめたい、愛おしい。そんな気持ち以上に強い加虐心が勝ってしまう。
だからいつも、
「抱きしめて…欲しい」
勇気を出して照れながら言う彼女を突き放してしまう。
そうするといつも、彼女は傷ついた顔をする。
それを見るとどうしようもなく高揚するのだ。
もっとそんな顔を見たいと思う。いじめたい。傷つけたい。
「そうだよな。無理もねェや…」
今更、沖田は彼女を本気でもう一度抱きしめたいと思った。