第6章 もってけ!武勇伝(ヘタリア/フランス)
駅前は、一月も中旬だというのにクリスマスの飾りが残っている。
「日本のこう言うところ、好きなんだよねー。潔癖で神経質なのに、変なところ適当って言うの?」
「俺はあんまり好きじゃない」
「あっそ」
アーサーの中では、もう頭の中でいろんな最悪シュミレーションが始まっているようで、全然お話にならない。
でも、少しメリットが見つかった。
滅多に来ない日本で、もう一度クリスマスを味わうことができた。
そう思えば、暖かなモノが流れ込んでくる。
「Hello?…五十鈴…?」
握りっぱなしの携帯が、光ったかと思えば、沈黙のアーサーから情けない声が漏れた。
『あ、アーサー…?ごめんね。今日、…ごめんね…』
か細い女性の声がますます曇ったかと思うと、途端に小さく嗚咽を漏らし始める。
その途端、俺は電話越しに泣き出す女性と、もみの木の後ろで電話を握りしめるカップルの女性が重なった。
アーサーは気づいていないのか、ただ戸惑うばかり。
「今日、来れないのか?…あんまり無理すんなよ?」
『……』
五十鈴は、彼氏に睨まれて萎縮している。
何も言うことができず、ただひたすら凍りついている。
「五十鈴…?」
すぐ後ろにいる彼女に気づかないアーサーは、何度も呼びかける。
ああ…ほんと、…どうしようもねえか。
俺はゆっくりともみの木の地面から土を拾い上げた。
そして、
「しっかりしろよ大バカ野郎!!」
そう言って周りの見えないバカ野郎に手榴弾(仮)を投げつけた。
「ぷへぇ」
もろ顔面に当たって、アーサーは間抜けな声を出した。
恐ろしくなるぜ俺のコントロール。
「何す・・だ、おま…」
公衆の面前で大恥かいたんだ、少しは頭も冷えるだろう。