第1章 −嵐の夜に−
「親殺しを疑われて、逃げてきた・・・って事?」
小さく頷くと死神はミオを見やる。
「なるほどね。魔女のやりそうな事だ。居た理由は分かったけど、君達の目的は?」
『母さんを殺した犯人を探す事』
「その口振りだと思い当たる人物でも?」
『母さんはキツネの魔女だったから、化かしたり隠すのが上手かったんです。だからアタシ達が今まで危ない目にあった事は無かったし・・・。あの日感じたあの嫌な波長は絶対に忘れない。ヒントがそれだけしかなくてもアタシは諦めない!!』
「そのお母さんの知り合いの犯行ってワケね。でも今のままだと君達、両方から追われるよ?」
『覚悟の上です。元々アタシ達はどっちにも居場所なんてないし・・・』
分かった上で出てきたんだあの場所を。
何もしないまま殺されたくなんかない。
「じゃあさ、君達も今日から死武専生になればいいじゃない」
『・・・は?』
「情報が一切ないまま闇雲に探すよりいいんじゃない?」
『アタシ達・・・魔女の血が流れてるんですよ?』
「だから?ミオちゃんが武器ならサンちゃんは職人で登録すればいいじゃない。なーんにも問題ないっしょ」
あっけらかんと言われて唖然とする。
「魔女に追われてる、しかも冤罪で。匿うには十分な理由だと思うけど・・・ね?シュタイン君」
「死武専と全面戦争起こそうってわけじゃないならいいんじゃないですかね。俺も興味ありますし、魔女と武器のハーフ」
頭のネジを回しながら不適に笑うシュタインと先程とは打って変わって明るい死神。
「あとは君達次第だよ。此処に居るのがどうしても嫌なら無理にとは言えないけど」
『なんで、そこまで信じてくれるんですか?』
当然の疑問に死神は笑う。
「勿論ある程度〝約束〟はしてもらうよ。それに、先に信じてくれたのはサンちゃん・・・君じゃない?」
その言葉にハッとする。
つい今しがた自分が言った言葉を反芻して・・・
「殺されるかもしれないって覚悟してた筈なのに私の事信じてくれたでしょ?〝約束して〟って。そこに私は掛けるよ・・・君達が私達を裏切ったりしないって」
優しい言葉に強張っていた身体の緊張が解けていく。
まだ小さい頃連れて行ってもらった魔女ミサで聞いた話では融通もきかないし魔女ってだけで狩られるって言われてたのに。