第1章 −嵐の夜に−
暫く歩くと〝death room〟と看板が掛けられた大扉の前に着く。
ここまで見てきて建物はどれも綺麗だったし、思っていたおどろおどろしさは全く感じられなかった。
男はコンコンと大扉をノックすると、中へ入るよう目で訴えられる。
渋々入ると目の前はギロチンの鳥居が並んでいた。
「先に言っておくが、余計な事はしない方が身の為だ」
『わかってるから大人しく着いて来てるだろ・・・。でもミオに何かあったらどうなるか、分からないなんて言わせないからな』
凄んでは見たものの状況がアウェーなのは十分理解してる。
如何にもならなかったら・・・なんて考えたく無いしそんな余裕も無い。
アタシは無理でもミオだけは逃がさないと・・・。
『お姉!!』
声が聞こえて顔を上げるとそこには目にいっぱいの涙を溜めたミオの姿が。
『ミオ!!』
ホッとしたせいか力が抜ける。
思わずよろけてしまった身体を支えてくれたのは嬉しくも無い、隣の男。
『お姉、大丈夫?』
振り払おうにもガッチリと掴まれた腕はビクともせず、ちらりと男を見やると目を細めてこちらを見るだけでその眼差しからは手を焼かせるなと言われているようだった。
駆け寄ってくるミオに空いている腕を伸ばすとギュッと抱きついて来た。
『ごめんね、アタシのせいで』
『ううん、だい・・・じょうぶ』
我慢していたのがグスグスと泣き出すミオの背中をそっと撫でる。
小動物のように震えるその背中に申し訳なさが募った
「あらあら・・・どんないじめ方したの?シュタイン君」
声のした方を見ると一枚の大鏡。
そこには骸骨のお面を付けた黒い何か。
言われなくてもそれが死神だと直ぐに分かった
「失礼ですねえ。少し可愛がった程度ですよ」
シュタインと呼ばれたその男はアタシから手を離すと懐から煙草を取り出して吸い始める。
煙を吐き出すと気怠そうに段差に腰掛けて座ってしまった。
泣きじゃくるミオを宥めつつ鏡を見るが死神は〝うーん〟と腕を組んで何か考えている様子。
『アタシはどうなってもいい。でもミオは、この子は・・・』
「まぁまぁ。そんな顔しないで2人共こっちに来なさいな」
言い掛けた言葉は陽気な声と手招きに寄って掻き消される。
ミオの手を引いて鏡に近付くと首を傾げる死神