第1章 −嵐の夜に−
ねぇ、母さん。
一体何があったの?
父さんが居なくなってから、母さんはアタシ達によく隠し事をする様になったよね・・・。
アタシがもっと早く戻っていたら。
アタシがあの日、出掛けなかったら。
後悔しかない。
父さんが居なくなってから毎日のように言われ続けてきた
〝ミオを守ってあげてね〟って約束、アタシ守れてない・・・。
大丈夫だから、任せてって何度も言ったのに
ミオにも大丈夫だよって言い聞かせてたのに。
アタシがちゃんとしてないから。
だからだからだからだから!!!!
『母さ・・・ん・・・』
ガラガラと遠くから音が聞こえる。
段々と音が近付いてくる
ゆっくりと目を開くとそこは真っ白な天井。
頭がズキンと鈍く痛む。
ここは・・・・?
「目が覚めましたか?」
『・・・・!!!』
ハッとして声の方を見るともう見たくないと思った男の姿。
『ミオ・・・ミオは?!』
「大丈夫ですよ。彼女は無傷だったので」
音の正体である車輪の付いた椅子から立ち上がると男は此方に寄ってきた。
柔らかなベットに寝かせてくれたとは言え、油断出来る相手では無いと身構える。
「来てもらえますか?死神様がお待ちだ」
『死神・・・・?!』
目を見開く。
男の表情は相変わらずヘラヘラとしており感情が読めない。
「大事な妹さんも死神様の所に居ますよ」
『!!!・・・ミオに何か』
「心配要りませんよ。未だ生きてます、勿論無傷で。ただ、君が抵抗すればどうなるか・・・言わなくても分かりますよね?」
笑顔の威圧。
とは正にこの事。
従う以外の選択肢は無さそうだ。
重苦しい身体を無理矢理立ち上がらせると服の袖が長い事に気付く。
よく見ればそれは男が来ていた悪趣味な継ぎ接ぎの白衣。
元々着ていた自分の服は無く、何ともみすぼらしい格好だった。
「では、いきましょう。あ・・・そうそう。服は破れてたり血が付いたりしてたので脱がせました。暫く我慢してソレ着てて下さい」
辛うじてワンピースのように着れない事もないが・・・。
『我儘言えない、か』
小さく呟いた声は聞き返される事なく、消えた。
此方を返り見る様子無く歩く男の後ろを着いていく。
死神が居るというなら、此処がかの有名な死武専という事か