第1章 −嵐の夜に−
木の影に身体を預け少しばかりの休息を取る。
雨の音だけが響く中、口を開いたのはミオだった。
〔お姉・・・。私達、ちゃんと見つけられるかなぁ〕
『見つけられるか、じゃなくて見つけるんだよ』
〔・・・もし、見つからなかったら?〕
『そんなもしもなんて想定してないよ。絶対に探して必ず・・・』
〔私・・・まだ信じられないよ。お母さんが死んだなんて〕
震えた声で言われた言葉にアタシだって信じたく無いと言いそうになって止まる。
言ってしまうのは簡単だけれど、信じたくはないけどそれが揺るが無い事実で変えようの無い事。
こうなった以上過去を振り返っても仕方ない。
母さんが殺されて、その魂さえも無くなった理由はアタシにだって分からない・・・。
情報を集めないと。
『・・・・?』
〔どーしたの?〕
『・・・何か居る・・・?』
雨の音に紛れて何かの足音が聞こえる。
動物じゃなくて、人の足音。
『ミオ。行ける?』
〔私は大丈夫だよ〕
木を背に音がした方に集中する。
先程の追手がもう来たのか、それとも違う何かか。
「誰か居るのか?」
『!!』
ふいに掛けられた声に思わず動揺してしまう。
ジィィコ、ジィィコと自然からは聞こえない謎の音と共に1人の男が草陰から現れこちらをジッと見ている。
「・・・魔女?」
首を傾げて問うその男はニヤッとこちらを笑い見た。
『危害を加えるつもりはない。見逃してもらえないか?』
なるべく体力は使いたくはないし、襲い掛かってこないなら無理に戦う必要はない。
「・・・魔女?と武器ですか。変わった組み合わせですね」
『・・・』
〔お姉・・・?〕
「解体してみたかったんだよなぁ・・・魔女も」
〔避けて!!!〕
ドンッ!と激しい衝撃とミオの言葉で無意識に身体を動かす。
ヘラヘラと薄い笑みを浮かべる男からはある種の狂気を感じた。
「チェーンソー、ねぇ。死武専の生徒、じゃなさそうだな」
ふむ、こちらを見るその瞳に殺意よりも好奇心を感じて嫌な汗が流れる。
『アタシ達には、やらなければならない事がある。・・・邪魔するようなら少し眠っててもらうぞ』
凄んではみるものの男は気にした様子もない