第5章 −実技訓練、波乱の幕開け−
“ツギハギ研究所”
長居禁止と書かれた看板に至る所がツギハギになっている異様な場所。
シドから居場所を聞いた皆の後を恐る恐る着いて行く。
口が裂けてもそこから来ましたなんて言える空気でもなくて。
歩く度にズキズキと痛む腹部を擦りながら大きくため息をつく
『お姉・・・?』
心配そうに見上げてくるミオに大丈夫だと笑って伝える
嘘だってきっと気づいちゃいるだろうけど。
「なんだオマエ。随分とヤワなんだな」
振り返ってこちらを見ながら馬鹿にしたような声で言ってきたブラックスター。
鼻先で笑いながら言う姿に悪いとは思ってないのだろうと心底呆れる。
「謝りなさいよ!アレはどう考えてもブラックスターが悪いでしょ?!」
「俺様のステージを邪魔したアイツが悪いだろ!俺様は悪くねぇ!!」
言い合いを始めるブラックスターとマカの様子に頭が痛くなってきた。
正直もうなんだって良い。ブラックスターとは仲良くなれそうにないし、仲良くなる気もしない。
・・・・そもそもこの場の全員、仲良くなったって迷惑だろうしな。
何も言わないアタシを見てミオが大きく深呼吸したのが見えた。その次の瞬間鼓膜が揺れる衝撃を受ける。
『謝って!!!!お姉に謝って!!!』
アタシの前に立って大きな声で言ったミオに目を見開く。
『ミオ。いいから』
『良くない!!痛い思いさせたならごめんなさいってするんだよ!』
そう言うとミオはスタスタとブラックスターの前へ歩み行く。
訝し気な顔をするブラックスターの前に立つとビシッと指差し大きく息を吸い込んだ。
『しっかり謝れる人の方がカッコイイし“BIGな男”だと思うよ』
「俺様に指図しようってのか?」
『指図じゃないよ。分かってほしいだけ。私の大事なお姉を傷つけて平気な顔してて欲しくない』
ブラックスターに凄まれていても引かない
普段はアタシの後ろで静かにしてて大人しいはずなのに・・・。
『私がカッコイイと思った人はそんなことするような人じゃないもん!』
「カッコ・・・イイ?俺が、か?」
呆気に取られてるブラックスターの言葉に頷くミオ。
言葉を反芻して理解するまでにきっとその場の全員時間が掛かった。