第5章 −実技訓練、波乱の幕開け−
「無駄な努力はやめろ。どうせいつか死ぬんだ・・・。ゾンビになれば〝死〟へのプレッシャーがなくなる。恐怖から逃れられるんだぞ」
「そんなの間違ってる!シド先生はそんな事言う人じゃなかった!!」
「聞くより習え!!とりあえず死ね!!!」
シドが自分の墓を抱え、マカに襲いかかる。
襲われると思っていなかったのか唖然としたままのマカ。
『危ない!!』
ミオが叫んだと同時にブラックスターの蹴りが墓に当たり攻撃が相殺される。
『へぇ・・・思ってたより出来るんだ・・・』
思わずそう呟いてしまった。
目立ちたがりのあの様子ではどうみても感が鋭そうには見えなかったから。
『お姉!カッコいいね、ブラックスター・・・』
『・・・は?』
『ヒーローみたい!!』
キラキラとした目でブラックスターを見るミオの様子に今度はアタシが唖然とした。
アレの何処がヒーローだって言うの・・・?
やっぱりシュタインに何かされてしまったんだろうか・・・。
痛む頭を抱えて大きくため息をついたが、相変わらずミオの視線はブラックスターに向いている。
人見知りの激しいミオがここまで他人に興味を持つのも珍しいし、姉としては喜ばしい事なんだろうけど・・・相手がブラックスターっていうのがなぁ・・・。
「十字落とし(リビングエンド)!!!」
鈍い音と共に墓の落下攻撃を喰らうブラックスター。
「KILLコーンカーンコーン♪授業も終わり・・・そろそろ死ぬか?」
『お姉・・・このままじゃ・・・』
不安そうにアタシの服を引っ張るミオ。
見学だから手出ししなくてもいい気はするんだけど・・・
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったな。墓が名無しだと困るだろう?」
先程までこちらに見向きもしなかったシドがこちらを見る。
そう言われると会釈くらいしかしてないな・・・。
「ちょ・・・その2人は!!!」
引き止めようとするマカを軽く交わし、シドは軽々と墓を片手にアタシ達の前に来る。
『アタシはサン。こっちはミオ。墓に入る予定は当分無い』
「そうか。なら・・・サン、ミオ。俺がその予定変えてやろう」
ニッと笑ったシドはマカを襲った時と同じ様に墓をアタシ達に振り上げる。
「避けて!!!」
マカの声が聞こえるより先にアタシはミオを抱えて後ろに大きく飛んだ。
『こうなる訳か・・・。なるほど』
