第1章 −嵐の夜に−
それに引き替えアタシはと言うと・・・。
『お姉はカッコイイね!』
黒のオフショルダーにデニムのワイドパンツ。
薄紫色の髪には似合う色合いかもしれないけど、肩と腹が・・・出過ぎじゃない?
『どっちも露出度高くないか?』
ブツブツ言ったところで新しい服が出て来るわけでもないし諦めるしかないのだけれど。
「未だ掛かりそうですかー?」
扉を気怠そうに叩くシュタインの声が耳に入る。
『行こ?』
『そーだね』
無邪気に手を差し出すミオに笑い掛けてアタシも手を伸ばす。
しっかりと手を繋いで部屋を出ると待ちくたびれた様子のシュタインと目が合う。
「イイじゃない」
『ミオを変な目で見んな』
ヘラヘラと笑う表情に侮蔑の眼差しを向けバッサリと言い捨てる。
一瞬キョトンとした様子のシュタインに首を傾げると〝ああ!〟とわざとらしく手を叩いてミオの方を向く。
「可愛いんじゃない?サイズも合ってて良かった良かった」
『ミオが可愛いのはアンタに言われなくたってわかってんの!』
『お姉っ!は、・・・恥ずかしぃ・・・よ』
手をギュッと掴む様さえも可愛い。
こんなに愛らしい妹が居てアタシは幸せ者ですよ・・・。
「なるほど・・・シスコンってやつですか。死神様の前ではあんなに大人しかったのに、俺の前では何で・・・」
『会って直ぐに人ぶっ飛ばすような奴、どう信用しろと?』
「仕方ないじゃない。あの場ではアレが正解だったと俺は思ってますよ」
『2人共!喧嘩しないでよ〜』
行こうよと促すミオのお陰か不毛な言い合いは終わりシュタインの研究所へと足を進める事にした。
街並みを眺めながら歩いていると正に平和という言葉が相応しく、何よりも騒がしかった。
自然では聞こえない音や何に使うか分からない物を売る露天商。
本の中でしか知らなかった世界がそこにあって歩くだけでも十分楽しめた。
それはミオも同じようでアレは?アレは?と興味深々に聞き、その度にシュタインが説明してくれていた。
意外と面倒見が良い性格なのかもしれない。
何かある度に足を止めるせいで研究所に着いたのは不気味な笑う月が見え始めた頃だった。
『・・・不気味』
「ヘラヘラ・・・」