第1章 −嵐の夜に−
「ところで、シュタイン君?」
「はい?」
「サンちゃんのあの格好って・・・」
「駄目でした?ヘラヘラ」
「あのねぇ・・・。君に2人は任せるけどスピリット君みたいにならないでよ?」
「嫌だなぁ。先輩と一緒にしないで下さいよ」
『『・・・・?』』
よく分からない会話がされたが気に留める必要も無いかと思って居ると死神様から〝頑張ってね〜〟と軽く告げられる。
追及しなくても頑張る事は当たり前だなと勝手に思う事にした。
そこに色んな意味が込められているなんて気付かずに・・・。
死神様の部屋を出ると来た時と同じようにシュタインの後ろを今度は2人で着いて行く。
学校なのに全然人と会わない。
不思議に思ってはいたが、これも死神様の配慮な気がして敢えて聞くのを辞めた。
ミオは見慣れない景色にコロコロと表情を変えては楽しんでいる様子。
今まで殆ど、他人との接触をした事が無いアタシ達にとっては何もかもが新鮮で・・・。
暫く歩くと1つの部屋に辿り着く。
中に入ると置かれた簡易なロッカーから2着の服が出され、アタシ達に手渡された。
「街中を歩くのにその格好は目立つ。死神様の息子、キッドのパートナーから服を借りてくれたらしいから、着替えなさい」
『・・・サイズ違うけど大丈夫なのか?』
「キッドのパートナーは2人居て丁度君達くらいらしい」
『らしい、って・・・?』
「俺も久々に戻ってきたからな。そこでたまたま君達を見つけたってワケだ。ほら、早く着替えなさい。」
そう言うとシュタインは部屋から出て行った。
『優しいのか何なのか分かんないね、シュタイン博士って』
『・・・世話になるって言っても油断出来ないな』
そう。今は気をつかって?くれているのかとも思うがあの時の痛みは忘れないし、油断はしないに越した事ない。
気を抜いたら解剖でもされそうな雰囲気だ。
『お姉!この服可愛いね!!』
怪我は無いものの汚れてしまったお気に入りの服を渋々脱いだミオだったが、女の子らしいデザインの服がお気に召したのか早々に着替えてアタシに見せてくる。
ショートパンツにフリルの付いたキャミソール。
女の子らしい春色の柔らかな暖色で、身に纏って笑う姿は控えめに言っても花の様だ。
薄い桜色の髪がまた愛らしさを誘う。
贔屓目を抜きにしても可愛いの言葉に尽きる。
