第3章 真夜中の雨
カカシがいままで忍びとして生きてきた中で辛かったこと苦しかった事など星の数ほどある。
父が早くに亡くなり、やっと得た親友も失いどんどん仲間が死んでいく中でこの店だけは守られた。
アキオはどんな時でもカカシを受けいれ、何も話さなくても部屋の隅にそっと置いてくれた。アキオはいつも通り新聞を読んで眼鏡をかけて猫背でふんぞり返っている。
そんな姿が好きだった。
は、アキオみたいに態度が大きい訳でもないが纏う空気や押し付けがましくない優しさが似ていると思った。
ぼんやりと窓の外の雨粒を眺めていると、
がお茶をもってきた。
「どうぞ。」
「ありがとう。」
「何かあったら呼んでくださいね。」
「あぁ…うん。あのさ、」
「はい?」
「一緒にお茶しない?喋らなくてもいいから」
言ったあとからなんだか女の子に気持ち悪い事を言ってしまった気がすると、首の後ろから変な汗が出る。
案の定、目の前のはキョトンとした顔をしている。
「あの、変なこと言って」
「分かりました。」
「えっ?あ、そう?」
「少し待っててくださいね。私の分入れてきます。」
「あ、うん。はい。」
にこっとするとはまたパタパタと飲み物を入れに行った。
カカシはなんだかいつもと違う自分自身にソワソワしてきて落ち着かなくなった。
あんな事言わないのに自分は年下の女の子に何を言っているんだ。
しかも女にも困ったことの無い自分がまるで幼い男の子が女の子を誘う様ではないかと。
急にいい歳をして気恥ずかしくなってもぞもぞとタオルの下から手を出して茶を啜った。アキオのお茶より幾分か渋みが少なく飲みやすかった。