第3章 真夜中の雨
サスケが里を去って1週間たった。
カカシは、任務の報告を終えて家に帰るでもなく酒を飲みに行くわけでもなく、雨の中をふらふらと当てもなく歩く。
あれからナルトは体を治し次第自来也について行くことになり、サクラも綱手の弟子となった。
カカシはといえば、あの病院の屋上でナルトとサスケが戦っていた風景を思い出していた。
あのあと、サスケへもっと声のかけ方があったんじゃないか。
言ったことは本心だがサスケにとっての答えじゃなかった。
カカシはサスケが完全に納得する訳では無いことは分かっていた。
それでも少しは、木の葉の里に思いれがあり仲間を得てあの話の中で心に残るものはあった…いやあって欲しいと信じたかった。
どうすればあいつの心に届いたんだろうか。
ふと上を見上げると真夜中の暗闇を分厚い雲が覆い雨粒を天から降ろす。
もう既に終わったことを後悔しても仕方が無いのは分かってる。
大切なのはこれからどうしていくかなのだ。
だが、カカシが次に進むまでには少し時間がかかりそうであった。
気がつけば船瀬屋の前に来ていた。
店に入ると、彼女がいた。
はぎょっとした顔でカカシを見ると
「ちょっと待ってて下さい!!」
と店の奥に走っていった。
カカシのいつもより重くなった銀髪からぽたぽたと水滴が落ちていき、足元に小さな水たまりを作り始める。
「あぁ…傘もささずに来られたんですか?」
慌てて大きめのタオルをもってきてが背伸びをしてカカシの頭にタオルをかけた。
「うん、ちょっと任務帰りにここに寄りたくなっちゃって」
「まぁ!」
くすくすっと楽しそうにが笑った。その笑顔が、カカシの先程まで形容しがたい胸の穴がほんわりと包まれる気がした。
「そう言って頂けるなんて光栄です。温かいものお持ちしますね。そこの椅子にかけてお待ちください。」
カカシは言われるがまま白いミノムシのようにタオルにくるまり椅子に座った。
「カカシさんお茶でいいですかー!?」
少し離れたところから、先程とうってかわって大きな声で聞いてくるにカカシも負けじと声を張る。
「お茶でお願い!」
「はーい!!」
マスクの下の口元がほんのりと緩んでいくのを感じた。
とアキオはよく似ているなとふと思った。