第5章 流星雨
翌日、カカシは船瀬屋にを迎えに来ていた。
星を見たいという何ともロマンチックなお願いに、カカシも年甲斐もなくそわそわしている。
『お、お待たせしました。』
少し緊張しているは、いつもの本屋のエプロンスタイルではなく動きやすい余所行きの姿で、カカシはまるでデートするみたいだと照れくさくなった。
「行こっか。」
『はい!』
「ちょっと遠いし、ちゃんは木で移動出来ないだろうからお姫様抱っこかおんぶしたいんだけど、どっちがいい?」
『…おんぶでお願いします。』
「りょーかい。」
カカシは腰を下ろし屈むと、お邪魔しますとが背中に乗り首に手を回した。
の胸が背中にあたり、ベストを着てるとはいえ感触が分かる。彼女の脚を抱えている手に程よい重さの肉付きがより生々しく思えた。
これはお姫様抱っこより«色々»問題だったかもしれないと、カカシは意識をそらすように遠くを見て夜空を駈ける。
普段登ることのない屋根の上、ビュンビュンと通り過ぎ耳元で風が鳴る。
はカカシの背中から感じる温かみや男の人におんぶされてるという親族以外の男性に体がカチコチになっていたが
しばらくすると慣れて周りを見渡せる余裕が出ていた。
カカシが加速すると、一瞬街の光が閃光のように走りまた点となる。
次第にそれらは後ろへ通り過ぎ、演習場を抜けて森へと入っていった。
森は暗く灯りは月明かりのみ。
の目には木の隙間から漏れでる光で少し先しか見えないが、カカシにはそれよりも遠くが見えているようだ。
以前本を求めて旅をしていた時、は夜外に出るという事は無かった。というより出来ないといった方が正しい。
女一人旅だ。何が起こるか分からない。人通りが多くなるべく治安の良い場所を選び、夜は外に出ず宿から月明かりを見るばかりであった。
人の住む町から満天の星空というのはなかなか見ることが出来ない。
故には本当の自然の星空を見たことがなかった。