第4章 真夜中の雨2
の言葉はカカシにも何となくわかる気がした。
促すようにが目を閉じると、カカシも隠れていない目を閉じてみる。
暗闇の中、雨のやけに大きな音と珈琲の匂い。手から伝わるお茶の熱さ。肩にかかったままのお日様の香りがする少し湿気を吸ってしまったふわふわのタオル。
ほのかに感じるの息遣い。
今しか感じられないどこか懐かしく穏やかな感覚に神経が研ぎ澄まされていく。
再び光を取り込むと、『ね?』っとイタズラっぽく笑うがいた。
先程のが言った大好きなものに囲まれた世界に自分と2人という言葉を思い出し、
カカシは自分もその好きなものとやらにサンドイッチされている事が、妙に関節がむずむずして体を擦り合わせる。
「ちゃん、夜におすすめの本ってあるかな?」
誤魔化すようにしてわざと話を変える。
『夜、夜ですね。カカシさんはどんな雰囲気とかジャンルの本が好きなんですか?』
「俺はね…」
まさか愛読書は成人向けのドエロ小説『イチャイチャシリーズ』です!とは言えない。
若い女の子にそんな事を言ってはセクハラになるし、この馴染みの店で引かれて変態を見るような目で見られるのはまずい。
「そうだな。落ち着いた雰囲気の本とかあれば…そのまま寝ちゃえそうなやつ。」
『なるほど…ちょっと待ってくださいね。』
またパタパタとカウンターの方へ行き、下から1冊本を取り出して戻ってきた。
表紙には少し掠れたインクで『雨の降る夜は』と印刷されてある。
今日のような夜に読めといわんばかりの題名だ。
『これ、短編集なんです。その日の気分によって読むお話を変えてもいいですし、文章がとっても優しいので寝る前にオススメです。』