A world without you【ツイステ長編】
第1章 one
「ユズ〜!買ってきたぜ、ほらよ」
「あ、エース。ありがとう」
どことなく気まずい雰囲気が流れていたが、そんな言葉が聞こえてきて なんとか救われた。
目の前のテーブルにことりと音を立てて、お盆が置かれる。
その上には、ほかほかと美味しそうな湯気が立ち上がり 真っ赤なケチャップが添えられてあるオムライスと具沢山のスープ、そして色鮮やかなサラダが乗っていた。
つい先程まで昼食どころではないと思っていたが、美味しそうなそれらを見ていると自ずとお腹が空いてきて 小さく"ぐぅ"と音を立て、思わず唾液が湧いてくる。
「相変わらず凄い人だし、グリムが順番を抜かして何故か俺が怒られるし、もうクタクタだ…」
「ふなぁ〜美味しそうなんだゾ〜!いっただっきまぁーす!」
「タコ焼きは、っと。はい、フロイド先輩」
机の上に項垂れるデュースに、もう既に食べ始めているグリム。
そして未だ私の隣で なんだか不機嫌そうに無言を貫いていたフロイド先輩の前にタコ焼きが差し出され、ようやく皆揃った。
なにを言われるでもなく無言というのが一番恐ろしい。
触らぬ神に祟り無し!
見ないフリ、知らないフリ…
「よし。じゃあ食べよっか」
私の言葉を合図に 其々"いただきます"と呟き、食事タイムが始まる。
自分もスプーンを手に取り、オムライスを救い上げ口へと運んでいく。
「ん〜〜美味しい!」
「ユズの、オムライスか?グリムのせいで今日のメニューもまともに見れてなかったから オムライスがあるなんて知らなかったぞ…」
ふと目の前に座っていたデュースがそう言い、きらきらと目を輝かせながら私の食べているオムライスを見つめていた。
…そういえば、デュースの好物は卵料理だったっけ。
そんな事を思い出しながら、もう一度オムライスをスプーンで救い上げ デュースの口元へと持っていく。
「はい、食べなよ」
「い、いいのか!?」
「こんなに沢山あるし、食べきれるかなって心配してたところだから。」
きらきらと目を輝かせたまま、嬉しそうに笑顔を浮かべているデュース。
なんだか子供みたいだなと思い、思わず顔が綻ぶ。
私が差し出したオムライスを食べようと、デュースが口を開いた時。