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A world without you【ツイステ長編】

第1章 one











さっきまでチョコが何個貰えるかどうかの話題で持ちきりだったのに、エースのその言葉で 一斉に皆の興味がこちらへ。

…これは非常にまずい。





「いないよ」

「まぁそりゃそうか〜。お前が恋してる様な女の子らしい素振りなんて見せた事ないもんなぁ。つまんねぇの」





どきどきと心臓が早く脈打つのを隠す様に、必死に冷静を装って答えた、つもり。
上手くできているか不安だったが、すぐに返ってきたエースの言葉にほっと胸を撫で下ろす。

…いや、今物凄く失礼な事さらりと言われた様な気もするが、ひとまず置いておこう。






「どうやらエース様の仕入れた情報によれば、バレンタインデー当日は校門の前に女子達がチョコの入った色とりどりの可愛い箱を手に並んでるらしいんだよ!」





こんな変人ばかりの学園の生徒達、そんな人気があったなんて初耳だ。
…まぁ、皆顔は良い、もんな。確かに。

ひとりで納得しながら、デュースとグリムへと視線をやれば ゴクリと生唾を飲む音が聞こえる。





「この間のマジフト大会で全国に顔が知れ渡ったから、きっとグリム様宛てのチョコが大量なんだゾ!」

「そう言われると急に緊張してきたな…」





バレンタインデーの話で盛り上がっていると、いつの間にやら授業の時間がきたらしい。
ガラガラと音を立てて教室の扉が開かれ、トレイン先生がいつものようにルチウスを連れて現れた。





「げ…一限目魔法史かよ…」

「早く席につけ。授業を始めよう」





自然とそこで話は中断され、つい先程まで騒がしかった教室内は静かになり、ぞろぞろと皆が席へと戻りだす。
自分も席に着き 教科書やノートを開くが、頭の中は魔法史どころではなかった。





(チョコ…か。)





先程の皆の言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡る。
恐らくこの年頃の普通の男の子は皆、相手が誰であろうと バレンタインデーにチョコを貰えば喜ぶだろう。


…そう、"普通の"男の子であれば、だ。










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