A world without you【ツイステ長編】
第1章 one
「もうすぐバレンタインデーじゃん!」
「…は?」
予想もしていなかったその言葉に、思わず目を丸くさせてしまう。
「ハレ、インタインデーって…なんなんだゾ?」
「グリム、バレンタインデーだ。好意を寄せている相手にチョコを渡す行事だな」
「うん。…で、エースはなんでそんな張り切ってるの?」
首を捻るグリムに、淡々と答えるデュース。
そして呆れた様に尋ねる私。
そんな私たちを見て、眉間に皺を寄せ ふるふると肩を震わせている男が一名。
「おいおいデュース!お前はぜっっってぇ意識してんだろうが!!何俺は何も気にしてませんーって態度平気でとってんの?!」
「なっ、そんな訳ないだろう!バレンタインデーなんて俺はどうでもいい!」
「チョコォ…?!オレ様、絶対いっぱいチョコが欲しいんだゾ!!」
わいわいとものすんごく盛り上がっている。
これぞ、ザ思春期男子。
…いや。でもバレンタインデーの事なんてすっかり頭から抜け落ちていた。
ここは男子校だし、お世話になっている人…いや、お世話させられている人の方が多い気もするが…
でも、やっぱり一応"女子"なんだから、皆に用意するべきなんだろうか。
「今年は?俺も?晴れてナイトレイブンカレッジの生徒になった訳だし?さぞかし大量のチョコが貰えると踏んでる訳よ!」
「…やっぱり、そうなのか…?」
「ふなぁ!!って事は…未来の大魔法士のオレ様にも大量のチョコが…!!」
うーん。と考え込んでいる間にも、思春期男子達は夢が膨らんでいる様子で。
「…やっぱりチョコ、貰えたら嬉しいものなの?」
「「「そりゃそうだろ(なんだゾ)!!!」」」
ぽつりと呟く様にして問いかけたそれに、間髪入れずに思春期男子達がまるで合わせたかの様に揃えて返事をしてくる。
本当、この人たち。
仲悪いんだか 仲良いんだか…
デュースに関しては、チョコなんて意識してないクール男子の設定 即崩れてますけど。
「やっぱりそうなんだ…」
「で?ユズは誰かあげたい人はいないわけ?」
「そういえば、ユズのそういう話 聞いた事がないな。俺も気になる」
「こいつに限ってそんな相手、いる筈ないんだゾ」