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A world without you【ツイステ長編】

第1章 one










上手く言葉が出てこない。
謝りたい事、聞きたい事、沢山あるのに。





「…小エビちゃん」

「は、はい」




少しの沈黙の後、いつもの様にそう呼ばれ びくりと肩が震える。
なんて言われるんだろう。
なんだかいつもと違う雰囲気のフロイド先輩に、どうしたらいいかわからない。





「睫毛にゴミついてるから目ぇ瞑って」

「え、」

「早く」





いや、今それ言う??
…いいんだけど、いいんだけど。


戸惑いながらも、促されるままにそっと瞼を閉じる。
閉じた瞼の上をそっと睫毛をなぞるように親指を滑らせる。
その指先のひんやりとした感覚に思わずぴくりと体が震えた。




(フロイド先輩の手、なんでいつもこんなに冷たいんだろう。…人魚だから?)




そんな事を考えていると、瞼をなぞっていた指がするすると頬を伝って降りていくいくのがわかった。
そして、そのまま頬に手を添えられたかと思えば。






唇に、指先よりもうんと冷たい そしてうんと柔らかい何かがそっとあてがわれた。







「っ…」




驚きから、思わず目を見開くと 目を閉じる事なくこちらをじっと見据えている すぐそばにある金色の瞳と目が合う。
これは、フロイド先輩の右の瞳。

改めて間近で見ると とっても綺麗なその金色の瞳に吸い込まれてしまいそうになる様な、そんな感覚を抱いて少しも動けなくなる。





(フロイド先輩と、キス…してる…どうして…?)







どきどきと心臓が早く脈打つ音が脳の中へと響いている。


お互いの心臓の音や 息遣いまで聞こえてしまいそうな程にしんとした部屋の中に、ふたりきり。
まるで水の中にいる様な、そんな感覚。


立ち尽くしたまま、指一本動かせない。
ずっと交わったままの視線を逸らすこともできなかった。















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