A world without you【ツイステ長編】
第1章 one
再び冷めてしまったオムライスを食べようとスプーンを手に取ったその時、自分達の真後ろの席辺りから 吹き出した様に笑い始める声が聞こえてきた。
次から次へと一体なんなんだもう。
落ち着いて昼食も食べられない。
四人揃って笑い声のする方へと振り返れば、そこにはケイト先輩が涙目になりながら大笑いしている姿があった。
そして、その隣にはトレイ先輩、リドル先輩の姿も。
「先輩達?!いつからそこにいたんすか?!」
「君達がそこへ座る前からだよ、本当にいつもいつもうるさいな。ここが寮内だったら首をはねてしまうところだよ」
「あっははは!あーもうほんっと面白い。ユズちゃん達ってほんとお馬鹿さんだよねぇ」
「な、なんでそんなに笑ってるんですか?」
「すまない、盗み聞きするつもりはなかったんだが…」
盗み聞き…って。
まさか、フロイド先輩との会話を全部聞かれてたって事だよね。
それはなんか気まずい、ような。
「オムライスであんなに怒るなんて、ほんとフロイド先輩らしいというかなんというか…」
「いやいや、違うでしょ!」
「え?」
なんとか早くこの話を終わらせてしまおうと、へらりと笑いながらそう言えば、さっきまでお腹を抱えながら大袈裟な程にけらけらと笑っていた筈のケイト先輩に即座に否定されてしまい、思わず目を丸くさせる。
「フロイド君は、確かにオムライスを横取りされても機嫌を損ねちゃいそうだけど…でもでも、ケイくん今回はそれが原因で怒ったんじゃないと思うなぁ」
「でも、それ以外に思い当たる節がないんですよね…」
「直接本人に尋ねてみたらどうだ?」
また余計な事でも言ったのか、顔を真っ赤にして怒っているリドル先輩に首をはねられそうになって逃げようとしているエースとデュースとグリムに比べて、親身になって相談に乗ってくれるケイト先輩とトレイ先輩。
でも、フロイド先輩に振り回されっぱなしで、なんだか疲れてしまった。
…いや、あの人が気分屋なのは元からだし、私以外の人に対してもそうだし、別に私の事を振り回そうと思ってしてるんじゃないんだろうし、私が勝手に振り回されているだけ。
私はフロイド先輩の事が好きだから、少しの事でも一喜一憂してしまうだけであって。