第5章 体育祭!!
心操君は答えてくれた
「昔、本当に昔なんだけど…
俺は1度ネットマンを見た事があるんだよ」
「見た?」
「あの時、俺はヒーローになりたくて個性を上手く使う練習をしてた
その時、ネットマンがたまたま通りかかったんだ
任務帰りみたいだった
それでそいつに言われたよ
"ヒーロー向きの個性じゃないくせに、夢なんて見るな"ってね」
「………」
「分かるか?俺はヒーローになりたくて一生懸命頑張ってた
確かに俺は誂え向きの個性じゃない
"洗脳"なんて、精々ヴィラン向きだ
でもな、夢を見て何が悪いって思ったよ
皆夢を見てそれを目指してる、なのにあの男はそれを踏みにじろうとした
それが、許せないんだ」
「…ああ、じゃあ私を警戒するように見てたのは、あの人を恨んでいるからなんだ
あの男を恨んでいるから、娘の私も恨めしい?」
確かにそう思って当然だ
父はヒーローではなかった
肩書きはそうだとしても、決してオールマイトやイレイザーヘッドのような心は持っていなかった
ことある事に人を見下す最低なゲス男だった
だから、あの人はヒーローとして出世出来なかったのだ
「父の代わりに謝ります
ごめんなさい」
「……………」
頭を下げて謝罪をする
夢を否定されるのは悲しい
彼はその言葉で余程苦しんだはずだ
ただ黙って頭を下げる
その時間はとても静かだった
歓声も、話し声も、風の音も何も聞こえない無の時間
それはほんの数秒のはずなのに、私には何分も経ったように感じた
しばらくして
「なんでお前が謝んの?」
心操君はそう言ってきた
それに答える
「イラつくけど、あの男とは血が繋がってるからこういう事はしておかないと
遺族とはいえ、この髪色が嫌いなんでしょう?」
「俺は別に謝って欲しいわけじゃない、ネットマンの家族がどんなのか気になっただけだよ」
「へぇー、じゃあ見てみてどんなだった?」
「…………普通だったね」
「それはありがとう」
「……」
しばらく心操君は複雑そうな顔をしていたが、すぐに戻りいつもと同じようになった