第4章 襲撃
「はぁ、はぁ…」
「……………充希?」
扉を開けたのは、自身の教え子だった
彼女は何とも苦しそうな顔をしていた
無理もない
充希の個性「血液変換」は突然変異で発現したもの
だからその分、使い勝手やコントロールが悪い
思うような威力にしようとしても、やりすぎて思ったより血を失いすぎる場合がある
だから今の彼女は生気のない、雪よりも真っ白な色になっていた
「ちょ、ちょっと君!そんなに動いちゃだめだ!
ただでさえ失血多量なのにそんなに暴れちゃっ……」
廊下の向こうから刑事が現れる
オールマイトの事情を知る数少ない人物
塚内警官だ
彼は慌てたように充希を引き止めるが、ここが相澤のいる所だと知って驚き、黙ってしまう
「何しに来た、重体のくせに一体……」
そういった瞬間、充希はこちらに近づいてきた
そして
ドン!
「…………おい、これは普通逆じゃないか?」
「うるさいです!逆でもなんでもどっちだって良いですよ!!」
これはいわゆる"床ドン"
いや、"ベッドドン"
思春期女子がキャーキャー騒ぐシチュエーションで
そんなトキメキの場面のはずなのに、甘い花が存在しなかった
「はぁ……なんて顔してやがる」
ため息混じりにそう呟く
今の充希は、怒りと悲しさに顔を歪めていた
泣きそうになりながらも目を釣りあげて、必死に怒っているのを伝わらせようとしている
「……っどれだけ心配したと思ってるんですか」
彼女がやっと絞り出したのが、この言葉
震えるように言っては、涙を浮かべて悲しそうに悔しそうになって
「…………」
「たった一人でヴィランに立ち向かうなんて何考えてるんですか……
そんなの自殺行為に等しいでしょっ…」
「…………」
充希の言葉に何も答えられない
答えたとして、彼女の望む返答は与えてあげられないから
すると、ついに彼女は泣き出してしまった
「なんで………
ッなんでいつもそう危ない事ばかりするんですか!
8年前からずっと!あなたはいつも危ない事ばかりして怪我を負って!
毎回毎回、どんな思いで帰りを待ち続けてると思ってるんですか!!」