第4章 襲撃
手男の隣には頭が黒い霧のようなもので包まれた人間がいた
ということは、ワープはあの男の個性だろう
「フーッ!フーッ!」
怒りが
憎悪が
心に渦巻く
額や目元に青筋がビキビキと浮かぶのを感じた
「怖っ、女のくせに顔しかめちゃって
せめてニコニコ笑ってろよ」
「黙れ、お前は喋るなッ、よくもこんなことをッ!
私の肉親に手を出すのは許さないッ!!」
「肉親?」
手男は相澤先生の方を見る
「ふーん、家族みたいな感じなんだね…
良いねぇ、そんなに執着されて
ちょっと面白いわ」
指輪を付けたままの拳を握りしめる
痛みなんて感じない
痛みより憎しみの方が強くて、ミシミシと鳴ってもやめなかった
「にしてもまさかこのような力を持つ子供がいたとは
引き入れれば相当の戦力になりそうですね」
「はは、しかもあの個性を消すヒーローより速い
こりゃ手強いな」
くだらない
心底吐き気がする
今すぐにでも殺してやりたいのに、出来ない
離れれば相澤先生が殺される
「君はどんな個性を持ってんの?」
「殺すッ」
「物騒だなぁ
そうだ、自己紹介でもしようか?
俺は死柄木 弔
こっちは黒霧だ」
「以後お見知り置きを」
死柄木の言葉に続いて黒霧という男がお辞儀する
この2人は、ここにいるヴィランの中でも一段と強そうだった
戦うとしたら、黒霧はワープで色々援護するだろう
死柄木はどんな個性なのかが分からない
用心しなければ
「お前、ネットマンの娘だろ?」
「!?」
思わず反応してしまう
してはいけないことをしてしまった
「はは、顔に出やすいな」
ネットマン(網男)
それは自分の父のヒーロー名
糸を操る男という意味で付けたのだ
父も母もヒーローだったが、父は"名もなきヒーロー"の1人だった
無名だったのだ
能力は十分あるのに、機会に恵まれない
でも今はどうでもいい
そんなことより
「……何故それを知っているの?」
今更はぐらかしたところで無理だろう
大人しく素直に答える
「それは秘密だよ
こっちに来るってんなら教えるけど」
「………………」