第4章 襲撃
なら
なら、あの人は今、たった1人でヴィランと応戦しているのか?
奇襲が得意な個性で、物陰から仕掛けるのがあの人自身の専門なのに?
「ッ!」
顔が真っ青になるのを感じる
衝撃のあまり、泣きそうになるが口に手を当てて抑える
(なんて事を……そんなの自殺行為よ!!)
「あ!充希さん!」
「うェ!?」
急いでワイヤーで空を飛ぶ
「あのニートめッ
死んでたらぶっ殺してやるんだからッ!」
迷っている暇なんてない
ただあの人を助けたい一心で
ただあの人の無事を確かめたい一心で
少女は高く飛躍した
その頃、充希に電気を任された百は
「充希さん、大丈夫でしょうか………」
「うェ……」
行かせる訳にはいかず
かと言って止めれるわけでもなく
ただ彼女の無事を祈っていた
なんせ充希はヒーロー科ではないのだ
個性を使うための訓練も練習も積んだことはないであろう彼女が、1人ヴィランの元へ行ってどうなるか
結末は見えている
でも
「彼女のあの力は……個性?」
さっき、彼女は鎖とワイヤーを操っていた
鎖は腰に巻いて、緩く腕に纏わせるかのようにしている
ワイヤーは、機動するために数本を浮かせていた
彼女は個性の「念力」を上手くコントロール出来ないと言っていたはず
なのになぜ
「……………考えても仕方ありませんわね、ここはわたくしも、皆さんの安否を確かめるとしましょう」
さっき充希が私を見つけてくれたのと同じように、私も皆を助けに行くのだ
「上鳴さん、行けますか?」
「うェ!!」
「後ろは頼みますね」
慎重に駆け出す
皆を探す
(さっきの彼女……)
『怪我はない!?』
(なんだか別人のように見えましたわね……)
いつもと違って、穏やかな笑みを浮かべておらず、丁寧な敬語も使っていない
充希の真実を知らない百には、一瞬充希自身の「顔」が見えたのだ
それは、知らないからこそ分かること
「っ…………わたくしも、皆のために」
八百万 百は、必死に走った