第4章 襲撃
この灰色は、父親譲りの色
大嫌いな、糸仲 血木良(イトナカ チギリ)のものだ
(……姉さんとイトナは紫だったっけ)
父の髪色を受け継いだのは充希だけ
姉と弟はどちらとも紫色である
正確に言えば、桔梗色だ
(お母さんが菖蒲色だったからな)
桔梗色は深い紫色をしている
まさに花の桔梗そのもので、私は2人が羨ましかった
そして母は菖蒲色(ショウブ)
こちらも鮮やかな紫色をしている
「……」
父は嫌いだ
いや、嫌いなどという生ぬるい表現では足りない
生まれた時から、私は父と同じ部分があるというだけで吐き気がしそうだった
「充希は良いなぁ〜、こんなに髪が綺麗なんだもん
すごくよく手入れされてたんだね」
「そうなんですかね?」
「そうだよ!こんなに上質な髪をした人は今どき中々いないよ!」
「灰色だけどどこか淡い紫にも見えるんだもん
沙織が羨むのも分かるわぁ〜」
「あはは、それはありがとう」
ぎこちない笑顔になっていないだろうか
正直この髪色は好きではないのだ
だがまあ、嫌いという訳でもない
なんせこの髪には母の色も含まれているのだから
私の灰色の髪は、光の加減によって淡い藤色に見える
光が適度に当たれば灰色だが、僅かな月の光や突き刺すような太陽の光に当たると藤色に変化する
言うなれば、そのままの「淡藤色」だ
振り返って、沙織に言う
「沙織、良かったら私にも教えて下さいな
出掛ける時とかにこういった髪型でオシャレしたいんですよ〜」
「OK任せて!
そんじゃまずは省略したやつから教えるね!」
「はい先生!」
沙織は快く承諾してくれた
席を入れ替わり、今度は私が千春にする
「つむじから髪の毛を取って………
そうそう!それでこうやってねじ込んでいってね……」
「ふむふむ」
沙織は手際良く、簡単に教えてくれる
それから、朝の休み時間が終わるまで集中していた