第3章 1年A組の彼等
そして護身用のワイヤーが仕込まれた指輪を持って、家を出た
「おはよ〜」
「おはよう千春
あれ?沙織はまだ来てないんですか?」
「ああ、沙織寝坊したんだって」
「ええー」
「目覚ましかけたらしいけど壊しちゃったんだって」
「阿呆ですねぇ沙織」
「ははは」
教室に入るなり声をかけてきたこの女の子
彼女は紗倉 千春(サクラ チハル)
充希と同じクラスの女の子だ
個性は「成長促進」で、植物の成長を一週間だけ早めることが出来るらしい
「千春は目覚ましかけないんですか?
いつも早くに来てますよね?」
「私は中学の頃陸上やってたからいつも朝走り込みしてたの
そのおかげで目覚ましいらなくなったんだよねー」
「おぉ、それは凄いですね
私低血圧なので羨ましいです」
そんな事を話しながら、チャイムが鳴ったので席に着く
「おはよう皆さん
国語の準備は出来てますかー?」
目の前の教卓で国語担当の女性教師が言う
おっとりとしていて、男子はほとんどが釘付けだ
「………………」
窓の外を見る
外ではヒーロー科のB組らしき生徒達が取っ組み合いをしていた
(ヒーロー科ねぇ……)
正直言って、私はあまりヒーローになりたいと思わない
確かに私の持つ個性「マリオネット」と「血液変換」は強力だが、だからと言って、ヒーローになって人助けをしたいとは思わなかった
「姉さん…………」
ポツリと呟いたその言葉
それは、教室の誰にも聞こえることはなかった