Sogni d'oro/GIOGIO Parte5
第2章 シーグラス/ブチャラティ
目の前に現れたのは陽光にきらめく紺碧の海──波間は陽の光を浴びてキラキラと輝き、遠方には広く水平線が続いている。
あの海の端まで行ったら、いったいその先には何があるのだろうか……?
ブチャラティは、背伸びをしながら大きく息をする──
「やっぱり海はいいな……」
「うん、すっごく綺麗……」
海を眺めると心が洗われるような──そんなゆったりとした気分にさせられる。
ブチャラティ自身、海に来たのは久しぶりだった。いつも煩雑で違和感を感じる……言うならば、“ゆっくりと死んでいく”ような、そんな日常だ。だが、今だけはそんな現実を忘れられる……ような気がした。
そして、隣には──
「俺は気分が滅入った時、よくこうして水平線を眺めた……海は広くてどこまでも続いている、波はどれ1つ同じ顔は持たない、見ていて飽きなかった……そんな海を見ていると、その内、抱えていた悩みなんて、ちっぽけな事のように思えてくる──」
「そっかー……でも、ブチャラティって完璧そうなのに、そんな落ち込むようなことあるの?」
「おいおい、それは買いかぶり過ぎだな。俺だって人間だ……もちろん任務で失敗もするし、それ以外の事でも──」
他愛のない会話の中、ナマエの表情も徐々に和らいでいく。
「ねぇ、少し浜辺を歩いてもいいかしら?」
「あぁ、もちろんだ…… でも、あまり波に近付き過ぎるなよ? 裾が濡れるぞ」
平気──、そう言いながら、履き物を脱ぎ捨てたナマエが波際を歩き出す。
ふと足元に、砂とは違う色を見つける──
それを拾い上げ、徐に光に透かすと……キラキラと輝きを増す──それはでまるで宝石のようだ。
「ブチャラティ、見て! きれいな石──」
ナマエが小さな掌を広げる。中にあるに石のようなものを、ブチャラティが手に取り微笑む。
「あぁ、これはシーグラスだな。石じゃあなくてガラス片だ。長い時間をかけて海に磨かれるとこうなるんだ。小さい時によく集めたな……」
ブチャラティが懐かしむように目を細める。その表情は、どこか無邪気な少年に重なって見えた。それを横目に、ナマエも自然と頰が緩むのが分かった。
「なんだか……宝探しみたいね」
「あぁ、そうだな」
『あっ、ここにも──』と、ナマエが拾い上げたシーグラスは、水色に近い青緑色の欠片……