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Sogni d'oro/GIOGIO Parte5

第2章 シーグラス/ブチャラティ


そしたられを見つけた瞬間に、ナマエの表情がパッと明るく変わる。


「このシーグラス……なんだか、ブチャラティの瞳と同じ色じゃない? すっごく綺麗……」


『そうでしょう?』──と、微笑みかけるその笑顔に、ブチャラティが心臓の高鳴りを感じる。
この笑顔が向けられるのは、本来俺じゃあない……こんな笑顔を曇らせている……ミスタは何て罪な男なのだろうか──その瞳に映るのが、今だけ俺であるのならば……

ブチャラティがジッ……とナマエを見つめながら、そっと頰に手を差し伸べる。その瞳に映るナマエは、少し不思議そうに首を傾げているが、そのまま構わず言葉を囁く。


「……ッ」
「え……」


ブチャラティ自身に驚きはなかった。気付いていたのだ……この気持ちに……ここに来るずっと前から──
ブチャラティが徐々にナマエとの距離を詰める。そのまま唇が触れてしまいそうになった時──スマホに着信が入る。
その音を聴いてはたと我に返り、慌てて後ろに1歩下がる。


「……鳴っているぞ? 出なくていいのか?」
「……」
「ミスタから…だろ? 行き先も告げずに出て来てしまったからな、きっと心配しているはずだ」


ブチャラティの言葉に、ナマエがスマホの画面を確認する。しかしそれに出ることはなく、無造作に電源を切ると、そのままカバンにしまい込む。


「ナマエ……?」
「……」


ナマエはただ真っ直ぐ目の前の海に視線を向け──そしてブチャラティもまた、同じ様に前を見据える。
ふと、自分の指先に、ナマエがそっと手を絡ませる。それに気付いたブチャラティが、その右手を強く握りしめた……


「ねぇ、ブチャラティ……もう少しだけこのまま──」
「あぁ、もう少しだけ──」




遠く水平線を見つめるナマエの頰を、夕焼けが赤く染める──
少し肌寒くなった海岸沿いに、2人の影だけが長く伸びた。 the END
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