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創作短文まとめ

第3章 保田優哉


「お会計おねがいします」
「毎度ありがとうございます!」

結局優哉は、私が選んだキャラもののペン以外を、すべて適当に買っていた。
店員さんが商品を袋に入れていくのを見ながら、今日はこれで終わりかって少ししんみりしていると。
店員さんが手を止めて、私たち二人を見る。

「学生さん?付き合ってるの?」

予想外の出来事に頭が混乱する。

『つ、つき…あってません!!』
「あら、そうなんだ」

くすくすと笑う店員さん。どんどん顔が熱くなっていく。ちょっとからかわれただけなのに!

「付き合ってるよ」
『えっ。』
「ね?」
『おっ、あっ。』
「なぁんだ、やっぱりそうじゃないの!隠さなくていいのに〜。」

(ゆ…優哉さぁん!?)

呆然としているうちに会計は終わり、店員さんは「またね」と挨拶をして、
脳みそがついて行かないまま、私と優哉はお店の外に出た。

『…。』
「ななこちゃん」
『ふぁっ!』

優哉は私を見てへらっと笑うと、「じょーだんだよ」と言った。


「おこった?」
『…怒って、ない』
「じゃ、なんでそんなカオしてんの」
『………言わない』

ばか、ばか。
優哉なんて嫌い。
ほんとは知ってるくせに。

涙がこぼれそうになる。いつもそう。
一方通行だ。どうして届かないの?

じんわりと滲んでいく視界に、突然手が入ってくる。

「からかいすぎた」

私の手と、優哉の大きくてごつごつした手が一瞬のうちに絡んで。

優哉は私の顔を覗き込み、額にそっとキスをした。

『…!!!!』
「許して?ねっ。」
『ば、ばかばか!!ほんとばか!!何すんの、いきなり!!』
「はーい、おれはおばかさんでーす。」
『うう…』
「ね、付き合っちゃおう。そしたら泣き止む?」

気づけば私の目からは涙が流れていて、
優哉は親指でちょっと乱暴にそれを拭った。

『泣いてないもん』
「うそつき」
『でも、許してあげる』
「んふ。ありがとう」

いま、私どんな顔してるんだろう?
でも笑ってるのは確かだ。

「機嫌なおったね」
『…今のでまた怒った』
「ななこちゃん、好きだよ〜」
『うわっ、ちょ…やめ…!!!』

人目も気にせず道端でこんなことしてばかみたい。

だけど、私、いますごく幸せだな。

『…私も優哉のこと、好き』

まだちゃんと顔を見れないから、そっと彼の腕に抱きついてみた。
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