第5章 小鷹狩澄真
*
「ついた。」
『ハァーッ…ハァーッ…なにっ…ここっ…っちょ、…っはぁーっ!まっ、てぇ…』
あれだけ走ったというのにケロッとしている小鷹狩。
そんな小鷹狩とは対照的に、下を向いて荒い息を整える私。
着いたのは、高校近くの小さな公園だった。
『…え、なんでこんな所に?』
すると小鷹狩は突然にスクールバッグの中を漁り、
中身がこぼれ落ちるのも気にしないで、何かを手に掴んで公園のベンチの方へ向かった。
『ちょっと!散らかしちゃダメだよ!』
どうやら私の声は届いていないようだ。
彼は手になにか…お菓子のようなものを持っている。
それを、ばらばらと地面に撒き始めた。
するとどこからとも無く鳩たちがやって来て、地面にばらまかれたお菓子を鳴きながら啄んでいく。
『!?』
「…俺、鳥好き。お菓子あげるの好き。…だから、こういうことするの、許してくれる人が好き。」
『…鳥が好きな人って説明は間違ってるじゃん。』
「ごめん。上手い表し方がわかんなかった」
馬鹿だ、馬鹿だこいつは。
一限遅れるのなんて気にしない。
地面にぶちまけたノートやペンも気にしない。
…。
『私はね、小鷹狩みたいな人好き』
「ふーん。」
『ふふ、遅刻だね。また怒られちゃう』
「あ、ほんとだ」
『ふふふ、あはは!気づいてなかったの?』
朝の公園、誰もいない公園に鳩の鳴き声が響いて、
彼の綺麗な赤い髪は、まだきらきらと日光を反射し輝いていた。
『…好きだよ』
だから、これからも。
小鷹狩と一緒にいさせて。