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49番目のあなた【D.Gray-man】

第8章  前兆




「…え?」

「あの時、助けてやれなくて」



しかし、
謝ったことは“関係ない”の言葉にではなく、




「あ、あの時?」

「お姉さん令嬢に、色々言われた時」




見ていたにも関わらず、助けなかったことに対して。




「あ…」
すみれはその時のことを思い出す。


「ごめん、な。」


「そ…そんなこと、無いよ!
あの後、その人のティーカップが割れて、お茶会もお開きになったし…!」


「俺がやったんさ」

「え?」


「俺がやったの。ちょっと細工して。話題逸らせて、あわよくばドレス汚れて帰るかな〜って!」


ニシシッと、ディックはいつもの悪戯っ子な笑みを浮かべ、一瞬で軽やかな雰囲気を作る。


「そう言えば、ディックがお茶を入れてたような…
凄いね、そんなこと出来るの?」

「まあな。…でも、すみれに怒りの矛先がいくのは、予想外だったさ。」


ごめんな、と再び謝るディックに、すみれは首をぶんぶんと振り、否定する。


重苦しい雰囲気などなかったかのように、いつもの楽しい笑い話を沢山した。























(…ごめん、)

(ごめん、な。)

(……“関係ない”に、謝ってやれないさ。)


それに謝罪する事は、傍観者である自分を否定することになりそうで、ディックは言葉に出来なかった。

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