第18章 人の生
「あの…」
「うおおおおっ?!」
「…あ、…叫び声が、聞こえたので…」
「ゆ……ゆっ…!!」
幽霊か?!!!
「…私は、此処の。清掃員で」
「そ!!そそそそうか!清掃員か!!!」
ドッドッドッと騒がしい胸を鷲掴み、涙を滲ませながらバクは冷静なフリをした。
「幽霊か?!」と叫ばなくて良かった…というより、恐怖で声が出なかっただけだ。そして辛うじて蕁麻疹は出ていない。
ただでさえ灯りが充分ではない空間で、清掃員の彼女は深くフードを被っていた。フードからは口元のみが見えた。
「ん?待て!何故こんな所に人がいる…?!」
こんな所、掃除の必要なんてないだろう!?
やっ、やはり!!ゆ…ゆ……!!!
「順路を追って清掃してたら、ここまで来てしまい…」
「じゅ、順路だと?」
周りをよく見渡すと、建設途中の地下聖堂は所々に様々な言語で順路が書かれていた。
しかし、その言語は英語でも中国語でもない、見慣れない言語達であった。
「これらが読めるのか?」
「大体、ですけど…」
だいたい読めるだと?
俺様でもこれらの言語は習得していない。
「―――主要か国の言語は、わかるのか?」
「……はい」
「ほう」
思わず感嘆な声が漏れる。
主要ヵ国の言語のアメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダはもちろん、このようなマイナー言語まで習得しているとは……
「欲しい
是非とも科学班に来て欲しい」
「は、はい?」
これだけの多言語話者はなかなか存在しない。黒の教団は多様言語の報告書を取り扱う。
「どうやら配属先に間違えがあったのだな」
すぐに配置替えをしよう!大広間まで案内してくれ!と彼女の手を掴み、意気揚々とバクは歩き出した。
「…む、無理ですっ」
「無理じゃない!俺様を誰だと思っている?!」
アジア支部長であるこの俺様を知らないのか?!
ここの黒の教団員でありながら!!なんて事だ!!流石に認知度が低すぎるのではないか…?!ショックで頭を抱えた。
「し、支部長、様……」
「なんだ!俺様のことを知っているではないか!」
「そ、そうではなくて…っ
私はっ、此処で
償わないと、いけませんから」