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49番目のあなた【D.Gray-man】

第8章  前兆




「…つーか、随分と名残惜しい別れだったさね?」

「そ、そうかな」


すみれが、俺を好いてくれてる事は何となくわかっている。それでも、この行き場のない感情は抑えられなかった。


「…やっぱ、すみれはあのイケメン侯爵に、気を許してんじゃねぇの?」


俺の笑顔と比例して、すみれの表情が曇って行く。それでも、すみれを傷つけるであろう言葉を止められない。

だって、間違ったことなど、





「ま、俺には関係ねえ話だけど。」





一言も、言っていないのだから。









「…っ」


すみれが息を呑むのを、感じた。
そこで初めて「言い過ぎた」と思うも、時既に遅し。



「そう、だよね…」


言葉の刃をすみれに突きつけた事を、今更後悔する。その刃が、今度は俺自身を襲う。





ーーーーーー関係ない



全く持って、言葉通りである事に気づく。
だって、俺は傍観者なのだから。

すみれを傷つけるだけ傷付けて、
こんな時だけ、傍観者面する俺って、




(ほんと、ダッセえ…)


そんな事を、思いふけっていると、





「関係ない、か…」


意図せず呟いてしまったのだろう。
聞き逃してしまいそうな、すみれのか細い小さな声が耳に届いた。


ズキッ




胸が痛む。

窓を眺めるすみれの悲しそうな横顔を、見ていられなくてーーーーーーー





「……悪かったさ」

自然と、謝罪の言葉が口から出た。

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