• テキストサイズ

49番目のあなた【D.Gray-man】

第8章  前兆




「では、ここで御開としましょう」




お茶会の主催者である、ティキの声が静かに響き渡る。


「終る時間が少し早いですが、レディのドレスが残念なことに…」と、ティキは悲しそうな顔で言う。

「ミ、ミック候!私は大丈夫ですから…!」



先程の怒り狂った彼女は、何処に行ったのやら。
今は頬を染め、ティキへ駆け寄っている。

「それはなりません。直ちに馬車までお送り致します」

ティキは彼女の肩に手を添え、部屋を出ようと催促する。



彼女をエスコートする、ティキとすれ違うーーーーーー










“屋敷の正面で、待ってて”




ティキはすみれにだけ聞こえるように、耳元でコソッと呟く。


「…!」
すみれは慌てて振り返る。




「皆様、本日はご来賓頂き有難う御座いました。
次はガーデンパーティを催す予定なので、招待させて頂きます。」

ティキが恭しくお辞儀をする。
すみれはティキを見るも、ティキはすみれに見向きもしなかった。





ばたんっ



大きな扉が音を立て、ティキは部屋を出て行った。
それを合図かのように、皆足早に部屋を出て行くのであった。








* * *




「ミック候、見送って下さり有難う御座います!

次のガーデンパーティはいつですの?
私、楽しみで仕方がなく…」


ティキは彼女をエスコートするも、適当な返事や相槌をするだけである。
ティキが寡黙でいることをいいことに、彼女が馬車に乗り込む間際、


「すみれさんの態度ったら、不愉快極まりないことだと思いません?
御自身の、身の程も知らずーーー」









ダンッッッッ!!!!!!



彼女の横顔を掠めるように、ティキの手が、彼女の背後の馬車を強く叩いた。

「身の程をしらないのは、どちらかな?」


ティキは誰もが見惚れる微笑を浮かべるも、目は笑っていない。怒りが滲み出ていた。

「彼女の家は、レディよりずっと特別なお得意様でね……その、“危ない事業”ってヤツの。」

彼女の髪をサラッと撫で、耳元に唇を寄せる。



「令嬢でいたいのであれば金輪際、彼女の事を言いふらさないことだね。

さもなくばーーーーーー







消えちゃう、かもよ?」


ずり落ちる彼女をそのままに、ティキは立ち去った。

/ 356ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp