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49番目のあなた【D.Gray-man】

第8章  前兆




「だから。
貴族令嬢ちゃんとしたら、一緒に帰るさ。





祝ってくれんだろ?

楽しみにしてる」





ディックのその一言だけで。

さっきまでは、一人で怒って“ごめんね”とか
ディックに会ったら1番に“おめでとう”とか
“お茶会で何を見て、何を聞いたのか”とか


一人でぐるぐる考えてたのに、
誕生日を祝うことを、楽しみにしてくれるって言ってくれただけで、

「……うん」


同じ気持ちだと知っただけで、こんなにも嬉しくなって
“令嬢頑張ろう”なんて、思ってしまうなんて




(私って、単純すぎる…)

すみれは俯き、嬉しさを噛み締めていると、














「すみれご令嬢も、そうお思いでしょう?」

「?!はっ、はい!」

ティキに突然話を振られ、すみれは反射的に返事をするも、不自然な返事をしてしまった。

「まだ気分が優れませんか?
そうでしたら、またお声かけ下さい。」

「あ、ありがとうございます」

ティキはニコニコとしている、が。
見える。私には見える…ッ




余 所 見 し て る な




少し、怒ってらっしゃる。
(ティキ、ごめんって…!)

すみれは慌てて会話に入ろうと努める。
すると、刺々しい言葉を他の令嬢からもらってしまった。

「すみれさん、体調が良くないのでしたらお帰りになられては?
ミック候に何度も付添わせるのは、申し訳ないでしょう?」

この令嬢は確か、ティキに気に入られようと必死になっていると噂されてる人だ。


(そっか。ティキのこと、好きなんだ。)

だから、ティキが私のことを気にかけて面白くないのだ。

(触らぬ神に祟りなし、ね。)

「…ご心配おかけして、申し訳ございません。もう大丈夫ですので」

面倒事に巻き込まれるのは、御免だ。
すみれはそう思い、しおらしく謝罪(する振り)をし、ティキと彼女と距離を取ることにした。

が、




「すみれさん、そう言えばあなたの家…」

彼女の方が、気が済まないらしい。
すみれに突っかかってきた。

「は、はい?」

「事業が上手くいってないって噂、本当かしら?」



え?
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