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49番目のあなた【D.Gray-man】

第8章  前兆



「…俺は眼帯くんじゃねーから、」

「?、うん」

ティキは再び話し出したため、すみれも再び視線をティキに戻す。


「あえてギリギリになって誕生日を言ったのか、言うつもりがなかったのか。意図はわかんねーけど。




ギリギリに言われた事に拗ねるんじゃなくて、“教えてくれた”事に感謝すれば、いーんじゃねーの?」





ティキの言葉に、すみれはハッとする。



(……私、ディックの誕生日を知って、
「おめでとう」や
「教えてくれてありがとう」って、言った…?)




言って、ない。

一言も。



ディックの誕生日を祝いたい一心で、気持ちだけ先走ってしまった。
私一人で勝手にお祝い決めて、あたふた準備して、ましてや余裕を無くしてしまって。



挙げ句の果に、



「何で早く教えてくれなかったの!?」等と拗ねたりして。



先約のお茶会では、上の空で会話に入ろうとせず、ティキに心配かけたりして。


最悪だ。

皆に嫌な思いさせて、迷惑かけて。



最悪だ、私。



ディックに言われたじゃないか。



『ーーーお茶会終れば、すぐ会えるさ。

先約だし、ちゃんと令嬢してこいよ?』







私、全然令嬢してない。
ティキに呼ばれた来賓の子息令嬢だって、不愉快な思いをしたはずた。


申し訳ないことを、してしまった。

こんなんじゃ、駄目だ。




「…」

「すみれ…?」

黙り込んだすみれを心配し、ティキはすみれの様子を伺うように名前を呼ぶ。



(…ティキも、本当に優しいなあ。
こんな私に気を使ってくれるなんて。)



「…ティキ」

「ん?」

「ごめんね。」

「いや、何も?」


ティキは何のこと?と、にこりとすみれに笑いかける。

本当に、もう。


(ズルいなあ。)




「ティキ、」

「ん?」

「ありがとう」

「…どういたしまして!」


ティキはニコッと、優しい笑顔をくれた。
見惚れてしまうくらい、今日一番の笑顔だ。



「…ティキは面倒見が良くて、優しいね。」

「そお?誰にでもって、訳じゃねえけど。」

「本当、ありがとね!」

「じゃあ、お礼いただこうかな?」

「お礼?」





ティキはそう言うと、
すみれの顔に唇を寄せたーーーーー
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