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49番目のあなた【D.Gray-man】

第8章  前兆



ティキが隣にいた、が。
隣というより、目の前だ。

視界いっぱいにティキの顔…!



「ひっ…!?」

「オイ、人の顔見てそれはないでしょ?」
本気で傷つくわ、と呆れたため息を吐く。

「ティ、ティキ!」

「声のトーン落とせよ?ただでさえ見られてる」

shhー♪



ティキは人差し指を口元におき、“静かに”と笑顔でサインを出した。


(突然のイケメンは心臓に悪い…!)


すみれはティキと充分な距離を置き、ドキドキとうるさく鳴る心臓を宥めるために胸に手を置く。

その姿を見たティキが「だから、それ傷つくって…」とぼやいている。



「んで、さっきから何いじけてんの?」

「べ、別にいじけてなんか…、」

そうか。
皆の会話に入っていないから、いじけてるように見えたのか。

というか、私…



「…」

「ん?どうした?」

「…ううん。やっぱりいじけてたんだなあって思っただけ。」

「どー見ても、そんな感じだったぜ?」

「も〜〜〜傍から見てもそう見えるなんて…、」
恥ずかしい、とすみれは顔を手で覆う。



「…まっ、そう見えたのは俺だけだと思うけどね。」

「え?」

すると、ティキはすみれの手首を掴み、すみれの顔を覆う手をパッと取り覗く。
再びティキとの距離が急劇に縮まる。

「わ!ちょ…っ、」

「シッ!ちょうど死角だから、周囲には見えないよ」

「見えないとか、じゃなくて…っ!」

ティキに手首を捕まれ、壁に押し付けられている。
これは、いわゆる壁ドン状態ではないか。
互いの顔も近く、息が触れそうだ。



「俺のお茶会に来てんのに、ずっと上の空で…ちょっとそれはないんじゃないの?」

先程のふざけた雰囲気とは違い、怒りを含んだような言い方に聞こえた。

「ぅ゛……それは、ごめんなさい。」
仰る通りかもしれない。

「分かればよろしい。」
ティキはすみれの手を離し、離れていく。
すみれは、はー…と息をつく。


「何か、気になることでもあんの?」

すみれは素直に頷くことにした。

「…うん、ちょっとね。拗ねたくなっちゃったことがあったの。」
大したことじゃないんだけど、とすみれは付け加える。







「また、あの眼帯彼氏くんのことで悩んでる感じ?」
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