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49番目のあなた【D.Gray-man】

第8章  前兆



ディックの誕生日を知ったのが、誕生日の数日前だったこともあり、本当にハンカチと小さなケーキしか、準備が出来なかった。


(…プレゼントにハンカチって、“別れ”を意味するって言うけど、本人からの要望だし…)


せめて気持ちが篭っていることが伝わるように、メッセージも兼ねて、すみれは刺繍を施した。





“  Happy Birthday DICK
          19☓☓.8.10  ”




うん、できは悪くないと思う。
こう見えて手先は器用な方であるし、裁縫や何かを作ることは好きだ。


一応、誕生日ケーキも手作りである。
生クリームとフルーツでデコレーションをしたので、そんなに見栄えは悪くない…はず、だ。
ディックの好みを把握していないので、口に合えばいいのだが。



(というか、ディックの好きな物……
あんまり知らなかったんだ、私。)


こんなに一緒にいるのに、彼の事を全然知れていないことに今更気づく。


(ディック、自分のことあんまり話さないしなあ…だからって、)


好きな人の、好きな物を知らないなんて。
なんだか情けないような、呆れるような気持ちだ。


(こんなんじゃ、“好き”なんて尚更言えないやー…)


ハンカチだけはいつでも渡せるように、ラッピングを施しバックに忍ばせてある。
そっ…とハンカチに手を添える代わりに、バックを優しく撫でた。


(でも、それでも。喜んでくれたら嬉しいなあ。)


お茶会であるが会話に入る気になれず(今更話にも入れず)、窓際に寄り、美しい庭園を眺める。
彼らの会話がBGMのように、微かに聞こえる。


「そうなんですね」
「素敵だわ」
「あら、ミック候…」






(早く、帰りたいなあ…)


窓際にこつん、と頭を寄せる。
すみれはディックとの会話を思い出す。


『ーーーお茶会終れば、すぐ会えるさ。
先約だし、ちゃんと令嬢してこいよ?』



終ればすぐ会えるって、言ってたけど
どういうことだろう?


私の屋敷で待ってる、ということだろうか。


それなら、尚更早く帰らなきゃーーーーー




























「さっきからさ、一人で何むくれてんの?」

いつのまにか、ティキがすみれの隣にいた。
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