第8章 前兆
「だから今度、新しいハンカチを買って返すね。」
「ほんと、気にせんでいい…あ。」
「?」
「じゃあ、そうしてもらうさ♪」
突然ディックの返答が変わったので、すみれは頭を傾げる。
「とうしたの?」
「せっかくなんで、すみれからのプレゼントとして頂こうと思って」
「プレゼント?」
「そ♪
俺、もうすぐ誕生日なんで」
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そして、今に至る。
ディックの誕生日が、ティキ主催のお茶会の日であった。
(ティキからお茶会の招待状を一緒に見て、日時確認したのに…!
何でその時、誕生日のこと言ってくれないかな…!!?)
思い出すと、イライラしてしまう。
だって、
何で、そんな大切なことを、言ってくれなかったのか。
言わなかったのか。
(…言うつもり、なかったんだろうなあ。)
言ってほしかった。
言ってくれない寂しさを感じ、すみれは目を伏せる。
ふと思いついたようにディックは言っていたし。
ディックは誕生日がどうのこうの言うような子ども、ではない。
(誕生日を前もって教えてくれなかったから、拗ねるなんて…)
これでは、私の方が子どもではないか。
(というか…ディック、まだ14歳になってなかったんだ……)
年齢は14歳と言っていたので、てっきり14歳または15歳になる年かとすみれは思っていた。
(え、私。13歳の子を好きになったの…?
衝撃的…!!!なんかショック!!!!)
私、別に年下好きじゃないし!
というか、ディックが大人びていすぎ!!!
改めて年齢を聞き驚いたが、それでもディックはディックであって。
気持ちが冷めてくれればいいのに、そんな訳もなく。
(やっぱり…ディックが好き、だ。)
この気持ちに、間違いなどない。
ディックに、お誕生日おめでとうって、
生まれてきてくれて、ありがとうって、
日頃の感謝を伝えたい。
だから、こんなとこでお茶会に参加してる場合ではないのだ。