• テキストサイズ

49番目のあなた【D.Gray-man】

第7章  嘘


すみれはそんなディックを知ってか知らずか、言葉を一つ一つ紡いでいく。
ディックはすみれの言葉に、耳を傾ける。


「…愛する人や守りたい人がいて、その人達を守るために戦いを選ぶことも、あると思う。」

すみれの優しい声音は、ディックの荒ぶる心を落ち着かせていく。


「…その人達を傷つけられて、報復で戦いを選ぶことも、あると思う。

だから、今も戦争がずっと続いてるんだと思う。」

こんな話題であっても、すみれの声や、彼女の纏う穏やかな雰囲気を感じられるだけで、ディックの気持ちも穏やかになっていく。

だんだんと、いつものディックの調子に戻っていく。


「だけど、戦争は悲しみや憎しみを生むこと。大事なモノを失うことを伝えていく事…平和や幸せを望み続ける事が、大切になると思うんだ。」



ああ、どうして彼女は人間の優しさとか、温かさとか、慈しみとか。

愛する心とか

そういうモノで、溢れているのだろう。



俺が、見落としているものを掬い上げてくれるのだろう。


ブックマンが存在しているのは、歴史を記録するためだ。

何の為に?

きっと、人間の過ちとか成功とか。
そうゆうものを記録することで、未来の人間の道標になるのならーーーーー


「…じゃあ、俺は頑張らねーといけねえな」
ディックはすみれに聞こえない声で、ボソッと呟く。

「?ディック、何か言った?」

「いや、なーんも!
…すみれのおかげで、スッキリしたさ。」

そう言うと、ディックは腕を伸ばし大きく伸びをした。

「戦争する人間って愚かだなって、馬鹿だなって、ずっと思ってた。…俺は違うって、思ってた。」

(すみれのことを考えたとき、愚かな考えに至った。)


「けど、すみれの話を聞いて、戦争の根源になるモノは誰にでもあるんだなって…生きてる限り皆、無関係じゃないんさね。

俺にできること、しねーとなって。気合入った。




…ありがとな、すみれ!」


(俺も、愚かで馬鹿な人間と一緒さ…てもそれは、)


「私の方こそ、いつもありがとう。」
すみれはそう言うと、優しい笑みを浮かべた。

(すみれのこと、だからなんだ。)



すみれのことが、大切なんだ。


この笑顔が、たまらなく好きなんだ。

/ 355ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp