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49番目のあなた【D.Gray-man】

第7章  嘘




どうして、この世から戦争が無くならないのだろう。




人間は言語というツールを持ち、意思疎通が可能なのに。

もし戦争を起こしたのなら、技術が発展している大国が勝つ事など容易に想像できるのに。


どうして、人間は愚かなのだろう。




「…愛する人が、いるからじゃないかな?」



すみれはいつも、俺では導き出せない応えをしてくれる。



「もし、ね。

愛する人が、誰かに怪我させられたりしたら、その人を恨むと思うし、やり返したくなると思うの。」


「…無謀で、己の惨敗がわかってた、としても?」
俺には、心底理解できない。


「…これも、もしも、の話だけど。
私の両親はね、事故死だけど。
もし、誰かの手によって命を落としてたら





刺し違えても、私は相手を殺してやりたい。

…そんな風に、きっと思うよ。」


もしも、だけどね。とすみれは苦笑いをする。
そんなすみれ見て、ひゅっと喉がなる。


どんな理由であろうと、すみれが人を殺せるわけがない。
だから、想像してしまった。



すみれが、殺されてしまうところを。


すみれの、死を。





駄目だ。

絶対に、嫌だ。


すみれに手を掛けた奴がいたら、俺は。




絶対に許さない。




絶対に、殺しーーーーーーー










「戦争があっていいなんて、少しも思ってない。」

すみれの声が耳に入り、ハッとする。


(俺は、今…)


自分の感情に飲まれていたことに、ディックは気づき、驚く。

(すみれがいなくなるって思った瞬間、怒りで、何もかも吹き飛んだ……)


それは、自分がとても嫌いな“愚かな”思考であった。

(ただ想像の範囲とはいえ…この俺が、感情だけで行動を起こそうと、し…た?)


気付けば、固く握りしめたディックの拳はひどく汗ばんでいた。

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