第7章 嘘
「俺はーーーーー
ひみつ。何も書かない。」
「えー!せっかくなのに!?」
「願い事なんてものは、自分で叶えるもんさ。」
ふっ、とディックは格好つけに笑って見せる。
そしてすみれと同様に、願い事が書かれなかったノートの切れ端を、窓枠の上に貼付けた。
2枚の紙が、仲良くゆらゆらと揺れている。
すみれは2枚の紙を見て、寂しそうに笑っていた。
(…本当は、七夕について知った時、ディックと夢とか希望とか。
二人で、“ずっと一緒に居られますように”とか。
幸せな願いについて、語り合えたら…と思っていた。
けど、
もう、これでいいじゃないか。
これだけで充分、幸せ…な、はず、なんだ。)
誰にも言えない。
本当の願いーーーーー
そうやって、自分にすら嘘をついた。