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49番目のあなた【D.Gray-man】

第7章  嘘



すみれは言葉を一つ一つ、紡いでいく。


「戦争があっていいなんて、少しも思ってない。けど…」

「…けど?」


「…愛する人や守りたい人がいて、その人達を守るために戦いを選ぶことも、あると思う。
その人達を傷つけられて、報復で戦いを選ぶことも、あると思う。

だから、今も戦争がずっと続いてるんだと思う。」


「…戦争が無くなることは、ねえのかな。」


「無くすには、悲しみも憎しみも全て呑み込んで、戦争を辞めなきゃいけないんだよね。…歴史的因縁も、全て排除して。」


「すっごく難しいことさ、ね。」


「そうだね。」


「だけど、戦争は悲しみや憎しみを生むこと。大事なモノを失うことを伝えていく事…平和や幸せを望み続ける事が、大切になると思うんだ。」


「…じゃあ、俺は頑張らねーといけねえな」
ディックはすみれに聞こえない声で、ボソッと呟く。

「?ディック、何か言った?」

「いや、なーんも!
…すみれのおかげで、スッキリしたさ。」

そう言うと、ディックは腕を伸ばし大きく伸びをした。

「ディックの問の答えになった気がしないけど…少しでも気が晴れたなら良かった。



…ディック、悲しそうな顔してたから。」


「そんなんじゃ、ねー…けど。

戦争する人間って愚かだなって、馬鹿だなって、ずっと思ってた。…俺は違うって、思ってた。」

今度はすみれがディックの言葉に、静かに耳を傾ける。


「けど、すみれの話を聞いて、戦争の根源になるモノは誰にでもあるんだなって…生きてる限り皆、無関係じゃないんさね。

俺にできること、しねーとなって。気合入った。




…ありがとな、すみれ!」


にっ、といつもの元気なディックの笑顔を、すみれに向ける。
そこには先程のような苦悩な様子はなく、やる気に満ち溢れたようだった。


「私は何もしてないよ。
こんなことを考えるようになったのも、やっぱりディックのおかげなんだ。



…私の方こそ、いつもありがとう。」



二人で顔を寄せ合い、微笑み合う。
こんな穏やかな時間が、ずっと続けばいい。

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