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49番目のあなた【D.Gray-man】

第7章  嘘



「…政治的立場で両国で話し合ってるのに、どうして戦争を起こすんだろう。戦争は無くならないんだろう。」


ディックは遠い空より、遥か彼方を見つめるように空を仰ぐ。
彼の翡翠色の目は太陽光を集め、まるで宝石のようには美しく輝いている。

輝いている、のに。


どうして、深い悲しみの色を感じるのだろう。


(そっか…)




きっと、ディックは 人が好きなんだ。
すごくすごく、好きなんだ。

好きだけど、意味のない戦争を繰り返す人間に、悲しさがあるんだ。






「…愛する人が、いるからじゃないかな?」





「……愛する、人?」
予想外の返信だったのだろう、ディックはきょとん、としてしまった。


「戦争が起こることによって、政治や経済がどう変わるかとか、私に難しいことはわからないけど…


もし、ね。

愛する人が、誰かに怪我させられたりしたら、その人を恨むと思うし、やり返したくなると思うの。」


「…無謀で、己の惨敗がわかってた、としても?」


「…これも、もしも、の話だけど。
私の両親はね、事故死だけど。
もし、誰かの手によって命を落としてたら





刺し違えても、私は相手を殺してやりたい。

…そんな風に、きっと思うよ。」


もしも、だけどね。とすみれは苦笑いをする。
ディックは一瞬目を見開いたものの、黙ってすみれの話を聞いている。


「あとは…人ってさ。他人によく見られたいとか、より好い暮らしをしたいとか、見栄や地位を求めるでしょ?


それって欲求というか、欲望というか…ある意味、自然なことだと思うのね。


でも、そこには必ず搾取する人、される人がいて。
人間って、嬉しくも悲しくも、欲求や欲望で生きてる。

だから、人間の欲が消えない限り、戦争が無くなるのって、難しいのかな。」


「…戦争が起こるのは、仕方ないってことさ?」


「そうじゃない。けど…

平和な国で、豊かな生活が保証されてて。
大事なモノを奪われたことが無い…搾取してる側の私が、“戦争は良くないです、辞めましょう”って、言っていいのかなって。




説得力なんて、あるのかな。」

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