• テキストサイズ

49番目のあなた【D.Gray-man】

第7章  嘘





「あ!あったよ!」



やっとティキからの手紙を見つけ出し、今はすみれの手に握られている。

「お、見つかったさ!詳細は?」

「ええっと、日時は1週間後みたい。場所はここだって。知ってる?」
すみれはディックに手紙を見せる。

「ああ。ここからそんな遠くないさね。てか、ここは…」

ディックはそう言うと、机に置いてあった新聞に手を伸ばし、ペラペラと新聞をめくっていく。

「どうしたの?」

「そこは国境付近さ。戦争してるあの国と隣国だから、最近は近くでも戦争が起こってる。戦争ではなくても暴動とかテロとかもあって、治安が悪い。」

ディックはとあるページの記事を指差し、すみれも同様に覗き込む。そこには先日、戦火が及んだ事が書かれていた。

「アイツの屋敷からは遠いし、お茶会に行くだけだから大丈夫だろうけど、周辺で寄り道なんてするなよ?」

「わかった。でも大丈夫だよ。元々すぐ帰るつもりだから。」

「了解。」

ぽんぽん、とディックはすみれの頭を撫でる。
撫でている手が心地良く、すみれは思わず目を瞑る。

(私の方が歳上なのになあ…)



「そういえば、何で新聞なんてあるさ?すみれは読まねーだろ?」

ディックはすみれの頭を撫でる手は休めず、机の上に置かれた新聞に目を落とす。

「…今までは、ね。最近はディックを見習って読むようになったんだよ。」

「すみれは真面目さねえ」

「いやいや、むしろ今まで読まなかった事が恥ずかしい!

読むようになって、世界の政治や経済の動きがわかるようになったし。
…あと、私が思ってた以上に、世界は戦争をしてることを知ったよ。」

「そんな真面目に読んでる令嬢はすみれぐらいだぜ、きっと。すみれのためになったなら、良かったさ」

「本当に、ディックのおかげだよ。…ありがとね、いつも。」

「…なあ。」

「うん?」

「どうして、戦争って無くならないんだろうなあ。」



ディックは、まるでひとり言のように問いかけた。

「外国語だとしても、言葉は通じるはずなのに。何故、人間は戦争をするんだろう。…人の命と、時間と、金と、何もかもを無駄にしてまで。」
/ 355ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp