第6章 願わくば
ティキとダンスをした後、あれからもダンスや談笑をいくつか交えた。
しばらくして、叔父叔母が来賓の貴族と商談の話になり、何処かへ姿を消した。
(やっと一息つける…)
流石にぐったりし、よろよろと一人壁際に寄る。
大きな窓は中世の代表的なアーチ型をしており、中庭が見える。
そこからは美しい花々の庭園と、立派な石造りの池が見える。
池の側に男性が1人、優雅に泳いでいる美しい鯉を捕まえてーーーーーー捕まえて?
ん?
私疲れすぎかな
再び目を凝らしてみるも……捕まえてる?!
えっ?何してるの?
男性はピッチピッチと跳ねる生きの良い鯉の尾を掴み上げーーーーーーーー食べた
えっ!?鯉って食べられるの?
しかも、生?!え?!!
(何してるのあの人!!!今、舞踏会だよ?!!)
一人で窓にへばりついている様は、傍から見たら異様だっただろうが、それどころではない。
驚愕していると、鯉を食事している男性がこちらへ振り返り、見上げる。
ティキだった。
(何やってんの?あのイケメン…)
目を離せずにいると、こちらに手を振っている。
すると、手招きをして
“ここに 来い”
って、言ってる。ジェスチャーで。
何故か彼の笑顔が黒く見えた。