第6章 願わくば
ダンスが終わり一息つこうとした時、女性たちの黄色い声が静かにホールに広がっていた。
「見て!ティキ・ミック候じゃない?!」
「まあ、今日も素敵だわ…」
女性たちを軒並み魅了している、涙ボクロが印象的な男性がいる。
何となく、注目の的に目線を向けた。
彼と目線がぶつかった、ような気がした
ニコッ
微笑みを頂いた。
(わお イケメンだぁ)
惚けていると、叔母様がイケメンの元へ急いで寄る。
「まぁ、ミック候ではございません?お久しぶりね。」
「お久しぶりです、マダム」
彼は叔母様の手の甲にキスをする。
「千年公はお元気かしら?近々、多くの材料が手に入りそうなの…」
「ああ、例の件ですね。お伝えしますね」
どうやら、叔父叔母の事業や商談の話をしているようで、私は置いてけぼりとなる。
ダンスも会話もたくさんして、疲れたなあ。欠伸が出てしまいそうーー
「…と言う訳で。ミック候、うちの子、すみれと一曲踊ってくださらない?」
ぼんやりしていたら、私の話になっていた。
「え…ちょっ」
叔母様は私を無視して話を進める。
「喜んで、マダム。レディ、私と踊って頂けますか。」
そう言うと跪き、私の手の甲にもキスをする。
断る選択肢は無しじゃないか!
「…こちらこそ、是非。」
互いに手を取り、ダンスホールの中心へ足を運ぶ。
ーーーーーーーー♪
(ああ、早く終わらないだろうか…)
もう踊り過ぎて体が悲鳴を上げている。
(ダンス終わった後の、楽しみを考えよう)
疲れてるけど、ディックと行った本屋に行ってみようかな、と考えーーーー
「俺とのダンスは退屈かい?」
ミック候に声をかけられる。
まずい、今はダンス中なのに!
「と、とんでもございません!少し緊張してまして…」
慌ててオホホと笑ってみせる。
「上の空って感じだったけどな」
私にしか聞こえないよう、小さな声で砕けた口調で話しかけてくる。
「…ごめんなさい、疲れてしまって」
「それならもっと楽にして?俺に体を預けるように」
私を咎めず、体に負担がかからないようリードしてくれる。そのため、二人の体が密着する。
「…わっ」
(ち、近い!腕の力すごいなあ。私、そんな体重軽い方じゃないのに)
ふと顔を上げると、ミック候と目線がぶつかる。