第17章 想い思われ反発して
「ほら!もう乾杯するみたいよ?
はいっ、グラス持って!」
リナリーに促されるままオレとユウはグラスを手にする。
浮き足立つコムイの声がマイクを通し食堂中に響き渡る。
《今宵は仕事も忘れて楽しもうじゃないか!!
では、乾杯!!メリークリスマス!!!》
「「「「「「メリークリスマス!!」」」」」」
食堂にいる全員で、酒が入ったグラスやジョッキを掲げカチンッと乾杯の音を奏でた。
(…黒の教団に来る前は、此処は重苦しいところかと思ってたけど……)
周りを見渡せば、食事や酒を気の知れた仲間と楽しむ団員達でいっはいだ。
(こんな、賑やかなクリスマスパーティーなんか開催したりして、さ)
聖戦の渦中に身を置いているとはとても思えない光景だ。
まあ、だからこそコムイはこのような催しや雰囲気作りを大切にしているようだ。
「神田、もうテキーラ飲んでるの?!」
「ほっとけ。リナ、お前は飲むなよ」
「お!じゃあオレと飲み比べするさー!」
面倒臭そうな顔をするユウを無視して「イエーイ!」とグラスを掲げ勝手に乾杯した。
オレはブックマン一族だから、沢山の戦争を見てきた。あちこちのログ地を周るもんで基本的には根無草な生活だ。
なので、このような組織に所属しイベントに参加するのは正直、とても新鮮だったりする。
(だけど、一番のその理由は…)
紛れもなくすみれがいる事に違いない。
すみれと過ごす(とは言うものの二人きりではないが)クリスマスが訪れるなんて、夢のようだ。
あの時―――まだディックと呼ばれていた時は結局、クリスマスどころか年末年始も一緒に過ごすことが出来なかった。
だから再びこうして思い出を積み上げられることが本当に嬉しい。
ここに居る誰よりも実は浮足立っている。
(すみれ、科学班の奴らとどんな話してんだろ…)
今すぐにもすみれの隣に行きたい。
猫語が治った後の体調は大丈夫なのか気になるし。
……まあ、科学班の奴らとあれだけ元気に騒いでいられるのであれば、心配は要らなそうだが。
すみれの側に行きたいものの、別れ際の雰囲気がよろしく無かった事もあり、何となくいつものテンションで突入が出来ないでいる。