第17章 想い思われ反発して
「ジジ!今日は飲もうねっ!!」
通常より人が多く賑やかな食堂であろうと、オレの耳はすみれの声を聞き逃すことはない。
意識せず彼女の声を拾ってしまう己の耳がなんともうらめしい。
(そんな大して飲めないくせに…)
てか、猫語治ったんだな。
そこにはいつも通りのすみれがいた。
「またお人好ししてんなー」
もうすぐコムイ主催のクリスマスパーティーが始まる。
まだ乾杯もしていないのに科学班の連中はどんちゃん騒ぎを始めていた。
しかもいつも控えめなすみれを中心に、だ。
(珍しいさね)
そんな風に思いながら遠巻きに眺めていると、ジジがすみれの首に腕を回しガシィィイッとヘッドロックをかます。
そこまでは割といつも通りの光景だった。
なんと、ジジは髭面の頬ですみれにジョリジョリと頬擦りをしたのだ。
「…は?」
素っ頓狂な声が出た。
ちょ、それはセクハラじゃね?!
またはパワハラにあたる行為じゃアリマセン???
ジジは単にすみれを部下として、または親心として可愛がっているだけなんだろうけど…っ!!
え?オレもよくすみれに抱きついてるって?
いや、オレだってそこまでしてねーし!?
それに口と口が!!近い!!!やめるさ!!
羨ま…じゃなくて、節度をわきまえて…!
すみれも満更でもなさそうな顔してんなさ!?
ギリギリギリギリギリギリ
内心、ハラハラしながら見守っていると
「痛っえぇ!バカ兎!!」
「あっ、ユウ。ゴメンさ〜」
「力入れ過ぎだ、ふざけんじゃねェ!」
ユウは「いい加減離しやがれッ」とブンッと腕を振り解き俺の手を払い除けた。
「もうっ、神田が逃げようとするからでしょ!」
クリスマスパーティーから逃れようとするユウをオレが捕まえ、リナリーがなだめていた。
でも今の力加減はユウに対してではなく只の八つ当りになってしまったため、少し悪かったと思う。
「フンッ、コムイ主催なんてロクなもんじゃねーだろ」
「えっ、そうなん?」
「バカ兎は知らねぇだろーが、前回なんてングぅ!」
「きょ、今日のパーティーは大丈夫よ!私もだいぶ関わったもの!」
リナリーが慌ててユウの口を塞ぐ。
なになに、めちゃ気になるんですけど!?