第17章 想い思われ反発して
「そりゃ戦争から目を背けちゃいけない。
だからって自分を不幸にして、周りに気を使わすのは違うんじゃねーの?
非常事態になった時、いつでも踏ん張れるように。
万全な心身で、今できることをするのがベストなんじゃねーの?」
「私はっ、周りに気を使わせてなんて…!」
「まだわかんねーの?
今、目の前に
すみれのことを思って心配してる奴がいんのに
それに、そう思ってんのはオレだけじゃ無ぇ」
「ッ、私なんかが…
何をしたって、誰も「言うな!!」
“誰も心配しない”
そう言い切る前にラビが言葉を被せた。
「“私なんか”って、言うな。自分を下げるな。
「そんなことない」って、他人に言わせる前ぶりか?」
「そ、そんなんじゃ…!」
(本当に、そんなつもりじゃないっ…!)
口元は弧を描いたようにラビは笑ってるけど、ちっとも笑ってない。
翡翠色の隻眼は突き刺すような冷気を放ち、その瞳の奥は怒気で燃えている。その熱はラビが放つ言葉にもどんどん伝染していく。
何を、そんなに怒って―――――
「いつまで、そーやって悲劇のヒロインぶる?」
「え…?」
ラビのその一言で、時が止まったようだ。
(悲劇の、ヒロイン…?)
誰 が ?
ラビの言葉が頭の中で何度も反復される。
“悲劇の ヒロイン”
誰が、
私が?
知らず識らずに、そんな素振をしていたっていうの…?
言われた意味をやっと理解できた瞬間、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
座っているにも関わらず、その衝撃で思わずクラっとするもなんとか持ち堪える。
“悲劇のヒロイン”
「……ッッ!!!」
ブワッと身体中の血が沸騰し、顔に熱が、目に涙が、集中していく。
(そんな風に…ッ)
好きな人に
ラビに、そんな風に思われていたなんて
悲劇のヒロインを気取ったことなどないけれど、私の素行が周囲からはそのように捉えられていたことに
(悲劇のヒロインって…そんなことッッ!)
恥しくて、情けなくて格好悪くて
ラビの前から今すぐ消えてしまいたくなった
隣りにいるラビに、顔を向けることが出来ない。