第5章 想う
表通りから少し裏路地へ入ってすぐ、目的地に着く。
「ちょい裏路地入るから、人目につきにくい店さね。」
どうぞ、とドアを開けレディーファースト。
今日はとことんエスコートしてくれるらしい。
そこは本屋とカフェが併設されたお店だった。
「こんなお店あったんだ!!」
「勉強好きのすみれは気にいると思って」
「小物雑貨も売ってる!可愛い〜!」
アクセサリーや小物入れ等、アンティーク調の物が可愛く飾られていた。
目をキラキラさせて見ていると、
「すみれも普通の女の子だな」
…笑われてしまった。
「そ、そりゃ普段は本ばっかで色気も無いけど…」
「いやいや、そうじゃなくて!こうしてると、ご令嬢に見えないなあと。良い意味で、さ。」
ディックは目を細めて微笑んでいた。
あ、こんな表情は見たことないかも…
今日は色んなディックが見れて眼福だ。
「すみれ、ほら!雑貨もいいけど、こっちがメインだろ?」
目的の中英辞典を探しに急かされる。
「俺的にはこの辺が使いやすいと思うさー」
「…なんか、今日はディックに頼りっぱなしだなあ」
こんな恋人がいたら素敵だろうな…って、待って私!
相手はディックだから!14歳だから!!
「今日は日頃のお礼さ。本に関しては、俺の方がお兄さん〜」
今日は全てが新鮮で、不覚にドキッとさせられて、楽しくて充実した日になりそうだ。